「毎日海へ行って鮭の顔を見る」、愛情を込めて育てた銀鮭をおいしく食べてほしい。
その思いをつなぐ、女川(おながわ)から石巻へのバトンリレー。
「産直 三陸産塩銀鮭 寒風干」にして食卓へお届けします。
「産直 三陸産塩銀鮭 寒風干」は、コープで20年以上供給しているロングセラー商品。宮城県内の養殖場で卵から孵化(ふか)させた銀鮭の稚魚を1年弱育てた後、宮城県の女川・雄勝(おがつ)地区の海で5~8カ月間育てます。それを石巻市内の工場で加工して、組合員の皆さんにお届けしています。
海の養殖場で銀鮭を育てるニチモウグループの生産者は6人。そのお一人、木村賢明(よしあき)さんに話を聞きました。
「11月初め、養殖場から海に稚魚で来たときはまだ10~15cmで150gくらい。その翌日から毎朝6時に海に行き餌を与えます。食べ具合で次の餌の量を決めます。餌を与えながら鮭や網に異変がないことを確認するのが、最も大切な仕事です。餌だけ急に与えると驚いてしまうから、水と一緒に海水になじませるように、鮭の生長に適した配合と大きさの餌を与えています。冬は夜明け前の真っ暗な海に出て行くのが私の日常。赤ん坊を育てるみたいに大事に育てています」。
4月になると、1~1.5kgに育った鮭から順に水揚げし、出荷します。木村さんをはじめとした生産者は、短時間で水揚げし鮭の鮮度を落とさないようにしています。
「良い鮭を作りたい! っていう気持ちが原点。私は鮭の顔を毎日見て、鮭も私の顔を見ている。それで鮭が安心してくれているのだと思います。育てる人によって鮭の身質も全然違うって言われたことがありますよ。出荷するときは、寂しいようなうれしいような気持ちです。みんながおいしいって言ってくれることが何よりの喜びです」と木村さんは少し照れくさそうに銀鮭への愛情を語ってくれました。
寒風干に加工するのは株式会社スイシンです。常務取締役で工場長・保原(ほばら)徳弘(とくひろ)さんにも話を聞きました。鮭の加工に携わって26年の鮭のプロです。
銀鮭の水揚げ時期は毎年4月から7月。保原さんは銀鮭の受け入れに必ず立ち会います。状態を把握して、加工の温度や湿度を決めます。商品の仕上がりを左右する重要なポイントだと保原さんは考えています。
「生産者が大切に育てた銀鮭です。その状態に合った加工をしたい。銀鮭は非常にデリケートな魚で、育て方はもちろん、水揚げの時間帯でも色や脂の乗りなど状態が変わります。ですから、仕分け(選別)しながらすべての鮭を触って製造計画を立てます」と保原さん。水揚げされた銀鮭は、翌年まで供給できるよう冷凍保存します。
「寒風干」とは、伝統の塩干製法を応用したもの。塩水に一昼夜漬け込んだ半身の鮭を、2~4度の低温・35~40%の湿度の寒風庫(かんぷうこ)で乾燥・熟成させます。96時間の熟成により、余分な水分が抜け身質が凝縮してうま味成分を増加させます。温度・湿度を微妙に調整しながら仕上げていきます。その後、再び冷凍しカットします。カット後のパック詰めの際には、飛び出した骨などをひとつひとつハサミで取り除き、検品を経てお届けします。
「鮭のうま味を凝縮させる寒風干の技術も大事ですが、生産者が良い鮭を育ててくれるからこそ、良い商品に仕上げられると思っています」と保原さんは力を込めて話しました。
生産者が愛情を込めて育て、工場でその気持ちも一緒に受け取って寒風干に加工しています。炊きたてのご飯にぴったりのひと品です。ぜひお召し上がりください。
ニチモウグループ
10月
親魚からの採卵(北海道内)
▼(3カ月)
1月~10月(1年弱)
孵化させ、川の水を使った養殖場で稚魚を育てます(宮城県内)
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11月~12月
育った稚魚を海の養殖場へ移動させ、海面養殖を始めます(宮城県内)
▼(5~8カ月)
翌年4月~7月
水揚げ・出荷します
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株式会社スイシン
冷凍保存して、製造分をその都度加工していきます(宮城県内)
【広報誌2019年3月号より】